児童虐待

(1) 児童虐待とは

 

児童虐待(child abuse)とは、保護者が、養育する子どもの心身に危害を加え、
子どもの生命や生活を脅かす事をいいます。

 

 

(2) 児童虐待の種類

 

児童虐待は、以下のように分類されます。

 

・身体的虐待(physical abuse)

 

身体的虐待(physical abuse)は、子どもの身体に外傷を負わせたり、
外傷が生じるような暴行を加える事です。

 

虐待が疑われる外傷の例としては、「打撲傷」、「あざ(内出血)」、骨折、
頭部外傷、刺傷、火傷(やけど)などがあり、暴行の例としては、
「殴る」、「蹴る」、「タバコの火を押し付ける」、「監禁する」、
「冬の寒い時期に戸外に締め出す」などがあります。

 

・性的虐待(sexual abuse)

 

性的虐待(sexual abuse)は、子どもに性的な嫌がらせや性的な関係を強要すること、
子どもに性的な行為をさせることなどです。

 

たとえば、性行為を強要したり、性器や性交を見せる、
ポルノビデオを見せる、ポルノグラフィーの被写体等に子どもを強要するなどが
性的虐待にあたります。

 

・ネグレクト(neglect)

 

ネグレクト(neglect)とは、保護の怠慢や拒否、放置等を行い、
保護者に求められる子どもの養育を怠ることをいいます。

 

たとえば、子どもの発達や健康に必要な衣食住や医療を与えなかったり、
子どもの意思に反して登校を禁止する、
同居人による身体的、性的、心理的な虐待を放置する、
乳幼児を家や自動車のなかに置き去りにする、
子どもを遺棄する、
愛情の遮断など情緒的な欲求を無視するなどが、
ネグレクト(neglect)に該当します。

 

・心理的虐待(psychological abuse)

 

心理的虐待(psychological abuse)は、子どもを終始非難したり拒否したり、
無視や脅迫、差別等をして心理的な外傷を与えたり、
心理的な外傷を与える恐れが大きい状態をいいます。

 

たとえば、言葉による暴力や無視だけでなく、
盗みの強要や宗教の強要、
さらには子どもの目の前でDV(ドメスティックバイオレンス)が行われるなども
心理的虐待(psychological abuse)に該当します。

 

以前は、嬰児(えいじ)の間引きや堕胎、人身売買、
過酷な労働の強要など、また、親子心中など、
社会一般の貧困が背景となった虐待がありました。

 

しかし、現代社会における児童虐待は、
親の子育てに対する不安やストレスが子どもに向かった結果、
虐待となっていることが多くあります。

 

人は、親や周りの人などから大切にされ、
愛情を注がれる事によって、自分を大切にする気持ちや、
他者への信頼感を育みながら成長します。

 

ですが、虐待を受けて育った子どもは、
自責の念や自尊心の喪失に苛まれ、
他者への不信感や愛情の欠乏感を募らせ、
心に深い傷跡が残る等します。

 

すると、虐待を受け育った子どもは、発達と人格形成に
甚大な影響を受けることになります。

 

(3) 児童虐待の実態

 

児童相談所に置ける児童虐待の相談件数は、年々増加しています。

 

その内訳を見ると、身体的虐待が最も多く、次にネグレクト、心理的虐待、
性的虐待と続きます。

 

また、虐待を受けた子どもの年齢は、小学生が最も多く、
次に3歳から学齢前児童、0〜3歳未満、中学生、高校生となっています。

 

児童虐待の殆どは、人目に付きにくい密室で行われ、
多くの虐待が相談対応まで至らずに存在していると考えられます。

 

また、実母による虐待が6割を占めますが、実父による虐待も2割を占めており、
保育者による養育支援や関わりが必要とされていることが分かります。

 

(4) 児童虐待が発生する背景

 

戦後の高度経済成長、急速な産業社会化は、
人口を移動させ、都市化を促進させ、消費社会化を推し進めました。

 

その結果、地域社会における人間関係の希薄化と、
家族の小規模化がすすみ、現在に至ります。

 

昔は、両親、そして祖父母、さらには地域社会に暮らす人々との
濃密な人間関係の中で子どもは育ちました。

 

たとえば、原っぱや路地裏など、多くの大人の目の届くところで子どもは遊び、
悪い事をすれば、自分の親ではない大人に叱られ、
良いこことをすれば、多くの大人に誉められました。

 

しかし、現代社会は異なります。

 

家族の小規模化により、子どもを養育する役割を、
母親が過剰に負うことになりました。

 

異年齢の子供同士、育ち合いができる空間もなくなり、
他人の子どもには無関心な大人が多くなりました。

 

また、ブランドものの子供服や多様な育児商品、
塾、おけいこなど遊びに余念がないなど、
子どもは親の私物化となっている現状もあります。

 

(5) 望まない妊娠・出産

 

さらには、望まない出産、収入の安定しない若年での出産等により、
子育てへの不安を募らせながら子育てをする母親が多くなりました。

 

しかも、子育ては自分達の欲求を妨げる足手惑いなものだと
思う親も増えてしまったのです。

 

昔は、家族内にきょうだいがたくさんいたり、
近所に赤ちゃんが生まれるなどして、
本当の親になる前に、子育ての予備知識を得ることができました。

 

しかし、現代の核家族化は、乳幼児と接した経験が
極めて乏しい人が母親になるという問題にもつながっています。

 

また、現在は子育ての予備知識もなく、
乳幼児に触ったことがないという人もいるほどです。

 

そのため、乳幼児の行動や生活への理解がなく、
不安や戸惑いを強く感じ、虐待へと走ってしまうことがあります。

 

(6) 子育ての不安や困難をもたらす原因となること

 

子育ての不安や困難をもたらす原因となることは、人それぞれさまざまですが、
主に以下のような要因が考えられます。

 

・望まない出産のため、子どもに愛着がもてない。

 

・望まない出産のため、子育ての協力体制を築くことができない。

 

・夫が家事や育児に非協力的。

 

・父親が不在のときが多い。

 

・身近に子育ての相談をする相手がいないため、孤立している。

 

・生計者の失業や低所得などの経済的困難を抱えている。

 

・ひとり親家庭のため、十分な養育資源がない。

 

・子どもが低出生体重児(未熟児)で難しい子育てになっている。

 

・子どもが慢性疾患や障害を持っていて、子育てが難しい。

 

・親自身が子ども時代に虐待を受けているなど、否定的な被育児体験を持っている。

 

・親にアルコール依存や薬物依存などの問題がある。